銀行に預けていても、お金は増えない。
そんなことは、誰でも知っている。それでも通帳を見て、利息の欄に並んだ数字を見たとき、はっきりと「これは意味がないな」と思った瞬間があった。
一方で、株の配当利回りを調べると、まったく桁が違う。3%、4%という数字が普通に並んでいる。同じ「預けて増やす」でも、こんなに差があるのかと思った。
日本の高配当株を買い始めたのは、そこからだった。
きっかけはコロナショックだった
本格的に買い始めたのは、コロナショックの時期だ。
株価が全体的に大きく下げた。ニュースは連日暗い話ばかりで、投資どころではないという空気があった。でも配当利回りで見ると、普段なら考えられない水準まで上がっている銘柄がいくつもあった。
株価が下がると、配当利回りは上がる。当たり前の仕組みだが、それを実感として理解したのはこのときだった。
もちろん怖さはあった。若い頃に短期売買で損をした経験があるので、値動きに飛びつくことへの警戒心は人一倍ある。ただ、今回考えていたのは「値上がりを当てにいく」買い方ではなかった。持ち続けて配当を受け取る前提で買う。それなら、下がっている今のほうが有利だと判断した。
一度に買わず、少しずつ。それだけは最初に決めた。
銘柄の選び方で見ているところ
業種にはこだわっていない。製造、通信、商社、金融、サービス——良いと思った銘柄なら、業種を問わず候補にしている。
そのうえで、いくつか自分なりの基準がある。
まず、配当利回りが3.8%以上であること。これは明確な線引きにしている。銀行預金と比べる意味がある水準として、自分の中で決めた数字だ。
次に、過去に減配が少ないこと。高配当株でいちばん怖いのは、株価の下落ではなく減配だ。配当が目的で買っているのに、その配当が減ってしまえば前提が崩れる。利回りの高さだけで飛びつかず、これまでどう配当を出してきた会社なのかを必ず見る。
それから、自己資本比率の高さ。財務に余裕がある会社は、業績が悪くなった年でも配当を維持しやすい。ここは減配リスクを避けるための確認項目として見ている。
あわせて、ROE(自己資本利益率)が高いことも見ている。預かった資本をどれだけ効率よく利益に変えているか、という指標だ。ここが高い会社は、稼ぐ力そのものがある。配当を長く続けられるかどうかは、結局この稼ぐ力にかかっている。
そして、PER・PBRが低いこと。ざっくり言えば、その会社の利益や資産に対して株価が割高になっていないか、という目安だ。良い会社でも、高すぎる値段で買えば利回りは下がる。何を買うかと同じくらい、いくらで買うかを気にするようにしている。
最後に、景気敏感株に偏らないこと。商社や海運のように景気の波を強く受ける業種は、良いときの利回りが非常に高くなる。ただ、それだけを集めると全体が同じ方向に動いてしまう。景気に左右されにくい業種と組み合わせて、バランスを取るようにしている。
加えて、株価そのものの上昇も期待できるかは見るようにしている。配当をもらいながら、株価も長期的に伸びていくのが理想だ。配当だけ高くて株価が下がり続ける銘柄は、結果としてマイナスになる。
最初の配当金は、数百円だった
初めて配当金を受け取ったとき、金額は数百円だった。
正直に言えば、拍子抜けするような金額だ。それでも、口座に入金された記録を見たときの感覚は、今でもよく覚えている。
自分は何もしていない。働いてもいないし、売買もしていない。ただ持っていただけで、お金が入ってきた。
「お金が働いている」という言葉を、そのとき初めて実感として理解した。まさに不労所得だ。金額の大小ではなく、その構造が体感できたことが大きかった。
そして素直に、もっと増やしたいと思った。数百円が数千円になり、いずれ数万円になる。そう考えると、買い増していく意味がはっきりした。
今は成長投資枠で買っている
新NISAが始まってからは、高配当株は成長投資枠で買っている。
配当金には通常、約20%の税金がかかる。1万円の配当なら、手取りは8千円ほどになる。NISAの枠内で買っていれば、これが非課税になる。
配当を目的にした投資と、非課税制度の相性は良い。受け取るたびに効いてくるからだ。
つみたて投資枠ではインデックスの投資信託を積み立て、成長投資枠で日本の高配当株を買う。今はこの形に落ち着いている。
インデックスと並行させている理由
「インデックス積立だけで十分」という意見はよく目にする。合理的な考え方だと思うし、否定するつもりはない。
それでも高配当株を並行させているのは、性質がまったく違うからだ。
インデックスの積立は、数十年後を見ている。途中の値動きは基本的に見ない。増えているかどうかも、正直あまり気にしていない。
一方、高配当株は「今」動いている。年に何回か、実際にお金が入ってくる。この手応えがあるかないかで、投資を続けられるかどうかが変わる、というのが自分の実感だ。
長期のインデックスだけだと、途中で何のためにやっているのか分からなくなる時期がある。配当金は、その間をつなぐ実感になっている。
老後のための積立と、今受け取れるお金。この二つを並行させることが、40代の自分には合っていた。
高配当株は「安全」ではない
最後に書いておきたいことがある。
高配当株は、預金の代わりではない。株価は下がるし、減配もある。会社の業績が悪化すれば、配当がゼロになることだってある。
私が「リスクは高くない」と判断したのは、あくまで銘柄をきちんと選んだうえでの話だ。利回りが高いという理由だけで買えば、それは若い頃の失敗の繰り返しになる。
利回りの数字は、その会社の状態を映した結果でしかない。異常に高い利回りには、たいてい理由がある。そこを確認せずに買わないこと。それだけは自分に言い聞かせている。
※この記事は個人の実体験をもとにした記録です。特定の銘柄の推奨ではありません。投資は自己判断・自己責任でお願いします。


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